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グラフの縦軸は0から? 棒グラフと折れ線で分けて考える

記事に載せるグラフの軸は、何を比べるかで決めます。棒の長さと折れ線の位置の違いを、架空の数値を使った自作図版で解説。軸の省略、複数図の尺度、公開前の確認方法を整理します。

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記事に載せるグラフを作ったら、変化がほとんど見えない。縦軸の下限を上げると、今度は大きな変化に見える。同じ数字でも、軸の設定によって読者が受け取る印象は変わります。

量を棒の長さで比べるグラフは、0を基準に描く。推移を点の位置で示す折れ線は、見せたい変化に応じて範囲を絞れる。 ただし、範囲を絞った理由と実際の数値が伝わることが前提です。

この記事では、企業の編集・広報担当者が記事用の図を確認する場面を考えます。数値はすべて説明用の架空例で、baluboや顧客の実績ではありません。対数目盛りなどの特殊な尺度は扱わず、目盛りの間隔が一定のグラフに絞ります。

棒の下を切ると、長さの比が変わる

棒グラフで件数などの量を比べるときは、0から値までの長さを描きます。途中から描くと、数字が正しくても、棒の長さが数値の比を表さなくなります。

架空の資料ダウンロード数が、1月80件、2月100件だったとします。2月は1月の1.25倍、増えた数は20件です。ところが縦軸を60件から始めると、画面上の棒が表す長さは20と40になり、2倍の差に見える形になります。

架空のダウンロード数は1月80件、2月100件。0起点なら棒の長さは1対1.25、60起点に切ると1対2になる。
図1:同じ80件と100件でも、起点を変えると棒の比が変わる。下段は誤読を説明するための図で、掲載を推奨する形ではありません。架空データ・balubo magazine編集部作成。

英国国家統計局(Office for National Statistics、以下ONS)の棒グラフ指針は、軸を0から始めるとしています。0以外から表示しなければ差を読み取れない場合は、ドットプロットなど別の形式を検討する方針です。1

企業記事への応用としては、棒を切って差を強める前に、「80件→100件、20件増」と数値を添える方法があります。2時点の値を伝えるだけなら、文章や小さな表で足りることもあります。

ここでいう0は、数値を測る軸の基準です。横棒グラフなら横軸が該当します。増減を示すグラフに負の値がある場合は、0を境に正と負を描き分けます。「どんなグラフでも画面の最下部が0」という意味ではありません。

折れ線の範囲を絞るなら、何を拡大したかを伝える

折れ線グラフでは、値を表す点の位置と、その間の変化を読みます。棒の長さを比べる図とは役割が異なるため、変化を確認する目的で、縦軸を0以外から始める選択肢があります。

英国国家統計局(ONS)の2016年の解説は、この長さと位置の違いを説明し、軸の範囲を絞ることを、データの見せ方を選ぶ編集上の判断として扱っています。2

たとえば架空の月次件数が80、84、82、88件なら、70〜100件の範囲で描くと、途中で一度減ってから増えたことを見分けやすくなります。ただし、これだけで「急成長した」とは言えません。1月から4月の増加は8件、1月の80件を基準にすると10%です。

架空の月次件数80、84、82、88を、縦軸0〜100と70〜100で表示。後者は上下の動きが大きく見えるが、増加幅は同じ8件。
図2:同じ推移を異なる範囲で表示した例。下段は縦軸70〜100件への拡大です。架空データ・balubo magazine編集部作成。

0からでも必要な変化を十分に読めるなら、あえて範囲を絞る必要はありません。ONSの現行指針でも、0を含めて傾向が明確になる場合は0起点が望ましいとしています。3

記事の本文には、図の形から受けた印象ではなく、読み取れる変化を書きます。この例なら「1月80件から4月88件へ増加。3月は前月を下回った」とすれば、図を見なくても意味が通ります。

月次件数だけでは、日数や流入数の違いも、増減の原因もわかりません。「施策が効いた」と説明するには別の根拠が必要です。軸を整える作業と、成果の理由を確かめる作業は分けて考えます。

二つのグラフを並べるときは、目盛りも比べる

複数の図で量を比較してほしい場合は、下限だけでなく上限と目盛りの間隔もそろえます。両方とも0起点でも、上限が違えば、同じ高さの棒が同じ件数を示すとは限りません。

英国国家統計局(ONS)の軸に関する指針も、比較できるデータを複数の図にする場合は、同じ尺度を使うよう勧めています。3

次の架空例では、資料Aのダウンロード数が80件から100件、資料Bが20件から25件へ増えています。Aを0〜120件、Bを0〜30件で別々に描くと、棒の高さと伸び方は同じになります。件数の規模を比べる記事なら、共通の軸に置くと違いを確認できます。

資料Aは1月80件、2月100件。資料Bは1月20件、2月25件。縦軸0〜120件でそろえると、Aは各月ともBの4倍とわかる。すべて架空値。
図3:資料A・Bを共通の尺度で表示。どちらも増加率は25%ですが、件数は異なります。架空データ・balubo magazine編集部作成。

一方、「各資料が何%伸びたか」を問う記事なら、増加率を直接示すほうが問いに合います。件数の図を載せたまま伸び率だけを語るのか、伸び率の図に切り替えるのか。先に記事の問いを決めておくと、図に持たせる役割も定まります。

公開前は、数字・尺度・説明を順に照合する

グラフの公開前確認では、元の値、図の描き方、本文の説明を別々に照合します。軸が適切でも、対象期間や単位を間違えれば、読者は別の意味に受け取ってしまいます。

以下は、本記事の例をもとにした編集部の確認表です。制作担当者への依頼や、出来上がった図への赤入れに使えます。

確認するもの原稿・図で確かめること
元の数字値、単位、期間、集計対象が資料と一致しているか
棒の基準0からの長さで量を表しているか
折れ線の範囲0以外から始めた場合、範囲と実際の増減量を読めるか
複数図の尺度同じ高さ・間隔が同じ量を示すか。違うなら比較の目的に合うか
本文とキャプション図だけでなく文章にも数値と条件があり、原因を言い過ぎていないか
スマホの表示目盛り、単位、注記が読め、画像の端で切れていないか

数字の出典がある場合は、図の近くに元資料へのリンクと集計条件を添えます。外部の図をそのまま転載する場合の利用条件確認と、自分で数字から図を作る場合の出典確認も、混同せずに行います。

割合を扱う記事では、軸に加えて「何を分母にした数字か」も重要です。AI検索対策の数字を分母から読み解く記事では、異なる調査の割合をそのまま比較できない理由を扱っています。

参照資料

  1. Office for National Statistics:Bar chart — Axis、Showing deviationを参照。
  2. ONS Digital:Does the axis have to start at zero? Part 1 – line charts — 2016年6月27日公開。長さと位置、軸を絞る編集上の判断を参照。
  3. Office for National Statistics:Axes and gridlines — Axis start point、Consistent axis scalesを参照。

資料の確認日は2026年10月1日。図版の数値と確認表は説明用に編集部が作成したもので、ONSの実データや図版の転載ではありません。

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