カバー:balubo magazine編集部作成。散らばった記事を一覧へまとめる概念図です。
新しい企画を考えようとして、似た記事を以前にも作った気がする。記事を検索するといくつか見つかるものの、何が違い、誰が内容を確かめられるのかが分からない。公開本数が増えると、記事を探す仕事にも時間がかかるようになります。
コンテンツの棚卸しは、対象の記事を集め、URLごとに「誰のどんな問いに答えるか」「今も使えるか」「誰に確認するか」を記録する作業です。 一覧があれば、新しく作る前に既存記事で足りるかを比べられます。少人数でオウンドメディアを運営する担当者に向けた、記事一覧の作り方と記入例です。
コンテンツの棚卸しでは何を整理する?
まず整理するのは、記事の所在と役割です。タイトルとURLを集めた後に、本文を読んで読者の問いと答えを短く書きます。タイトルに同じ言葉が入っていても、答えている疑問まで同じとは限りません。
たとえば「導入事例の作り方」と「導入事例取材の質問例」は、同じテーマでも読む場面が違います。前者は制作全体を考える人、後者は取材の準備をする人に向けた記事です。この違いを一覧に残せば、重複か、次の疑問に答える関連記事かを判断できます。
記事の所在を集めた一覧はコンテンツインベントリ、内容や利用状況を評価する作業はコンテンツ監査と呼ばれます。ここでは両者をつなげて進めますが、表に書くときは確認できた事実と、これから行う対応案を分けます。 「同じテーマの記事がある」という観察だけで、「一つに統合する」と決めないためです。
英国国防省のDefence Service Manual「Audit your content」は、目的と対象を決め、データを集め、品質・価値を評価して対応を提案する手順を示しています。企業メディアに対する規則ではありませんが、一覧を集める段階と判断する段階を分ける際の参考になります(2026年10月23日確認)。
最初にどこまで集める?
最初の対象は今回決めたいことに合わせて区切ります。新しい採用記事を企画するなら採用関連の記事、製品の案内を整理するならその製品を扱う記事と資料を集めます。対象外にした範囲も書いておくと、調べた部分だけでサイト全体を判断せずに済みます。
記事の一覧はCMS(記事を保存・公開する管理システム)から書き出せるURLやタイトルを出発点にできます。サイトマップ、公開一覧、担当者が営業や案内に使うリンク集も照合し、どこから集めたかと取得日を残します。アクセス解析で見つかったページだけを使う場合は、計測されていない記事がないか、別の一覧でも確かめましょう。
オーストラリアのAPS Professions「Conduct your audit」は、ページに加えて画像・動画・文書なども表に整理し、担当者や専門家を割り当てる方法を案内しています(2026年10月23日確認)。記事内から案内するPDFがあるなら、その資料の所在と確認担当も一緒に記録する、という使い方ができます。
同じ記事が複数のURLで現れたら、元の一覧を残し、管理する行をどうまとめるか確認します。別URLでも中身が違うページを、文字列が似ているだけで同じ記事にしないことが大切です。下書きも調べる場合は、公開済みの記事と状態を分けておきます。
記事一覧にはどんな項目を入れる?
一つの記事を一行にし、所在、読者、確認結果、次の作業を追える項目から始めます。最初から取得できるデータをすべて並べると、入力を終えることが目的になりがちです。今回の判断に使う列を選びましょう。
以下は編集部が作成した項目のひな形です。表の「項目」を管理表の列名として使えます。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 記事名・URL・公開状態 | どの記事か、公開済みか下書きか |
| 読者の問い | 読者が何を知りたくて開くか |
| 記事の答え・役割 | 何を理解し、判断できる記事か |
| 内容の確認先 | 原典、資料、内容を知る担当者 |
| 利用状況・計測条件 | 指標名、期間、絞り込み条件、取得日。営業での利用なども別記 |
| 確認した事実 | 本文・リンク・資料を見て分かったこと |
| 対応案と理由 | 継続、更新候補、関連付け、統合候補、要調査など |
| 担当・次の確認 | 誰が何を確かめるか、いつまでに判断するか |
例えば、次のように一つの記事を記録します。実際の顧客案件ではなく、説明のための架空例です。
記事名:製品Aの導入準備ガイド
URL・状態:https://example.com/product-a-preparation(説明用URL)・公開済み
読者の問い:導入前に自社で何を用意するか
記事の役割:担当者と準備する情報を決める
確認先:現行の製品案内、製品担当者
利用状況:営業資料から案内している。アクセスは未計測
確認した事実:本文は現行の案内と一致。記事内の資料リンクが開けない
対応案:記事を維持し、資料リンクの案内先を確認する
担当・次の確認:編集担当が次の編集会議までに製品担当へ確認。回答後にリンク先と表示を再確認
この例の「未計測」は「利用されていない」という意味ではありません。また、リンクを直す案を記録した段階では、修正が終わったことにもなりません。作業が進んだら、実施内容と確認日を追記します。
似た記事やアクセスの少ない記事はどう判断する?
本文の役割と利用場面を確かめてから、対応を選びます。タイトルの類似やアクセス数の大小は、調べるきっかけとして扱います。
先ほどの架空の「製品Aの導入準備ガイド」と、「製品Aでできること」という記事が見つかったとします。どちらも同じ製品を扱っていても、一方は導入前の準備、もう一方は機能の理解が目的です。読者の問いが違い、それぞれに必要な答えがあれば、両方を残して関連リンクでつなぐ案が考えられます。
逆に、二つの記事が同じ読者へ同じ手順を説明し、片方だけに古い条件が残っているなら、更新や統合の候補になります。その場合も、固有の取材発言や事例、外部からのリンク、残す必要のある記録がないかを確認してから決めます。

アクセスが少ない記事でも、限られた顧客の確認事項に答えたり、営業担当者が説明に使ったりする場合があります。スコットランド政府のDesign System「Analytics reporting」も、ページビューなど一つの指標だけでコンテンツを判断せず、利用者調査やフィードバックと合わせて見るよう案内しています。少数の利用者に必要な行政サービスの情報を、閲覧数が少ないだけで公開終了にしない例を挙げています(2026年10月23日確認)。
企業メディアで応用するなら、数値と一緒に「誰がどの場面で使うか」を聞きます。取得できる数値には期間と指標名を付けてください。検索結果からのクリック数とページの表示回数は同じものではなく、計測開始前の期間と開始後の期間も単純には比べられません。指標そのものを決める段階なら、オウンドメディアのKPI設計も参照できます。
棚卸し表の「統合候補」「公開終了候補」は検討の記録です。実際にページを移動・削除する前には、内容の担当者と管理担当者が、残す情報、リンクの行き先、記録の保存方法まで決めます。
棚卸しを次の制作につなげるには?
一覧から、次に判断する記事と確認する人を決めます。全記事を評価し終えるまで動けない仕組みにせず、確認済みの範囲から企画や修正へ渡す方法です。
新しい記事を提案するときは、一覧の「読者の問い」を見て、既存記事が答えている部分と足りない部分を書きます。答えがすでにあるなら、案内の仕方や関連記事へのつなぎ方を検討できます。必要な説明が一部欠けているなら追記、別の読者や場面に答える必要があるなら新規企画、というように制作内容を具体化できます。
更新する記事が決まった後の本文の見直しは、記事のリライトで確認する情報へ進みます。担当と日程を決めた作業はコンテンツカレンダーへ移し、記事一覧には判断の理由と実施した内容を残します。棚卸しと制作予定を同じ表で管理する場合も、公開状態と作業予定を別の列にしておくと、予定を実績と読み違えずに済みます。
まずは一つのテーマで、記事の所在と読者の問いをそろえてみてください。似た記事の違いを説明でき、次に誰へ何を確認するかが決まれば、一覧を企画の打ち合わせに使い始められます。記事を増やす前に、いまある答えと足りない答えを見渡すための棚卸しです。
参考資料
- 英国国防省 Defence Service Manual:Audit your content — 目的、対象、データ、評価、提案の手順。
- オーストラリア APS Professions:Conduct your audit — 一覧と担当者の設定。
- スコットランド政府 Design System:Analytics reporting — 指標と利用場面を合わせた判断。
資料確認日:2026年10月23日。本文の管理項目、架空例、図版は、企業メディア向けに編集部が作成しました。


