取材の撮影指示書は写真を載せる場所と伝えたいことから、必要なカット・優先順位・掲載条件を共有する文書です。 「人物を数枚」のような枚数だけの依頼から一歩進め、どの写真を何に使うかを書きます。
同じ取材の写真でも、記事の冒頭、本文、一覧の小さな画像では役割が違います。記事とSNSなど複数の掲載面を予定しているなら、撮影後の切り抜きだけでは対応しきれない場面もあります。企業の編集・広報担当者に向けて、写真家の判断を生かしながら、必要な素材を依頼するためのひな形を紹介します。
カバー・図版:balubo magazine編集部作成。撮影カットの例は架空の企画で、実際の人物や取材現場ではありません。
撮影指示書には、日時と枚数の前に写真の用途を書く
最初に「どこへ載せ、読者に何を見せたいか」を伝えます。 撮影する側が用途を把握できれば、表情だけでなく、背景や距離、画面内の情報量も相談できます。
たとえば、仕事の進め方を紹介する社員インタビューなら、顔が分かるポートレートと、仕事の内容を説明する写真は役割が違います。人物紹介には前者が使えますが、何を担当する人かを伝えたい本文では、許可を得た道具や作業風景などが候補になります。
指示書の冒頭には、記事の問い、対象読者、主な掲載面を一文ずつ置きます。企業や取材相手の紹介資料を丸ごと渡すだけでなく、今回の企画で何に焦点を当てるかを絞ります。記事制作の依頼書と内容をそろえ、原稿と写真が別の主題へ進まないようにします。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 企画・用途 | 誰に何を伝える記事か。冒頭・本文・一覧などの掲載面 |
| 日時・場所 | 集合先、撮影時間、移動、入館手続き、当日の連絡先 |
| 被写体 | 氏名・役割、必要な人・物・場所、撮影への合意状況 |
| 必須カット | 用途、構図の希望、優先順位、代替案 |
| 掲載条件 | 掲載先、二次利用、クレジット、加工・切り抜きの確認事項 |
| 納品 | 期限、形式、必要なサイズ、選定の担当と方法 |
表は編集部の実務用ひな形です。撮影規模に応じて項目を減らせますが、未定の項目は空欄で確定したように扱わず、確認担当と期限を添えます。
カットリストは、写真の役割ごとに優先順位を付ける
カットリストは、必要な写真を用途別に並べた一覧です。 すべてを同じ優先度で頼まず、時間が限られたら何を先に撮るかも共有します。
以下は「営業企画の仕事を紹介する社員インタビュー」という架空の企画の例です。表の場面が実際に撮れるか、撮ってよいかは事前に確認します。
| 用途・優先度 | 欲しい写真 | 撮影前に決めること |
|---|---|---|
| 冒頭・必須 | 本人と職場の関係が分かる横位置 | 文字を重ねる側、背景に写してよいもの |
| 人物紹介・必須 | 表情が分かる写真 | 縦位置や正方形への切り抜きも必要か |
| 本文・必須 | 仕事で使う道具や資料の説明 | 画面・紙面の機密情報を外せるか |
| 本文・可能なら | 同僚との相談場面 | 同席者の撮影・掲載への合意があるか |
「相談場面」は、当日に実際の場面があり、関係者の合意を得られる場合の候補です。説明のために再現撮影するなら、その扱いを決め、偶然捉えた仕事風景のように紹介しません。
予備カットが撮れない場合も考えます。職場の撮影が難しければ、本人が説明する道具だけを別の場所で撮るなど、記事に必要な意味を保てる代替案を相談します。何でも撮ることより、本文に必要な写真がそろうかを判断します。
横位置・縦位置・余白は、掲載面の切り抜きから相談する
構図は、画像が表示される比率と文字の置き方まで含めて確認します。 「大きい画像を1枚撮れば全部に使える」とは限りません。顔や道具が端に寄ると、一覧の切り抜きで主役が欠ける場合があります。
記事カバーに文字を重ねるなら、文字の位置と、おおよその占有範囲を伝えます。人物の左右を機械的に指定するより、何を残して何を空けたいかを説明し、撮影者と場所の条件を踏まえて決めます。掲載面のサンプル画像を、利用できる範囲で添える方法もあります。

人物を大きく見せるか、周囲の仕事場まで見せるかによっても、伝わる情報が変わります。ニコンのレンズ解説は、撮影距離などの条件を変えると、その場所の情報を伝える写真も撮れると説明しています。1 特定のレンズを一律に指定するより、「本人の表情を主に見せたい」「道具との関係を見せたい」と目的を共有するほうが、機材や現場に合う提案を受けられます。
解像度や納品形式も、掲載先の仕様から決めます。ウェブだけか、印刷もあるかで必要な確認は違います。納品後の強い切り抜きまで予定しているなら、そのことも依頼時に伝えます。
撮影できることと、掲載できることを分けて確認する
場所に入れる、カメラを向けられる、公開できる、別媒体へ使える、という条件を一つにまとめません。 編集部では、被写体・場所・写真の利用条件を別項目で記録する方法を勧めます。
本人の写真は掲載可能でも、同席者や背景の画面は対象外かもしれません。工場やオフィスなら、入れる区域、写してよい設備、取引先名や図面の有無などを窓口へ確認します。危険がある場所では、現場の安全指示と立入条件を優先します。
写真家への依頼では、記事、企業サイト、SNS、広告など、予定する用途を具体的に伝え、利用範囲とクレジット、加工の扱いを確認します。文化庁の契約に関するFAQも、著作物の利用や実績紹介について、契約と利用条件を確かめる必要があることを説明しています。2 これは個々の写真について利用許諾が成立したという根拠ではありません。今回の合意を別に残します。
取材相手への依頼時にも撮影の予定を伝え、必要な確認を進めます。取材依頼メールに、撮影の目的・時間・掲載先を加える形で相談できます。
当日は必須カットを照合し、納品後は記事に当てて選ぶ
撮影当日はリストと実際の条件を照合し、変更した内容を記録します。 たとえば予定した会議室が使えなければ、移動できる場所と残り時間を確認し、必須カットから撮影者と順番を組み直します。
移動前や終了前に必須項目を確かめ、足りない用途があれば残り時間で撮れるかを相談します。撮影者が構図や光を判断する余地を保ち、指示書にない良い提案も、用途と掲載条件に合うかで検討します。
納品後は、きれいに撮れた順だけで選ばず、記事の該当箇所へ置いて意味を確かめます。誰が何をしている写真か、キャプションで説明できるか。背景の機密情報や、合意範囲外の人物が残っていないかも確認します。画像の意味を文章で補う方法は代替テキストの書き方で紹介しています。
撮影指示書は完成した構図をすべて命令するための書類ではありません。編集者が必要な用途と条件を伝え、撮影者が現場で判断できる材料を渡すものです。企画の問いから写真の役割を決めると、原稿と写真を一つの記事として選べます。
参考資料
2026年10月26日に確認。ひな形・カットリスト・優先順位は編集部の提案です。
- ニコン「ポートレート撮影の単焦点レンズの選び方」 — 距離・背景などで変わる写真の情報。製品推奨や画角の固定ルールとしては扱っていません。
- 文化庁「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」 — 契約と著作物の利用条件。個別の掲載可否は当事者間の条件に沿って確認します。



