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採用コンセプトのつくり方

採用コンセプトを、自社の事実から組み立てる手順を解説。求める役割、候補者の関心、提供できる仕事と支援を整理し、社員への質問、架空企業の作成例、記入シート、求人・社員記事への使い方まで紹介します。

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Index目次11項目

採用サイトに載せる言葉を考えていると、「挑戦」「成長」「自分らしさ」といった候補が並ぶことがあります。生成AIにもコピー案を頼めるいま、言葉の候補は増やせます。そこで難しいのは、自社で働く実際の姿に照らして、どの言葉を選ぶかです。

採用コンセプトは、どんな人と、どんな仕事をしたいのか、その人に何を提供できるのかをまとめた採用活動の軸です。 社内の事実から組み立てると、採用サイトのコピーだけでなく、求人で説明する内容や社員インタビューで聞くことも考えやすくなります。初めて採用コンセプトをつくる経営者・採用・広報担当者に向けて、作成の手順と記入例を紹介します。

図版・カバー:balubo magazine編集部作成。作成手順と記入シートは編集部の提案であり、企業の例は明記した公開資料または説明用の架空設定です。

採用コンセプトとキャッチコピーは、どう違う?

採用コンセプトは採用で何を伝えるかを判断するための考え方です。キャッチコピーはその考え方を短く印象に残る言葉へ表したもの。コンセプトの内容が決まれば、掲載先に合わせて複数のコピーをつくれます。

たとえば「成長できる会社」というコピーを掲げても、顧客との交渉を任されるのか、専門技術をじっくり学べるのかで、経験できる成長は違います。誰がどんな仕事を通じて何を学べるか、困ったときに誰が支えるかまで説明すると、候補者が自分の希望と比べられます。

この記事では近い言葉を次のように使い分けます。用語の境界にはさまざまな整理がありますが、社内で役割を共有できることが出発点です。

言葉決めること成果物の例
採用戦略事業に必要な役割を、いつ、どの方法で採用するか採用計画、募集経路、選考の進め方
採用コンセプト誰に、どんな働く価値を、何を根拠に伝えるか社内で共有する説明文と根拠
キャッチコピー働く価値を、短くどう表現するか採用サイトの見出し、広告の言葉

採用コンセプトだけで、給与や勤務地などの条件が合わない問題を解決できるわけではありません。まず採用の課題が情報の伝わり方にあるのか、仕事や条件そのものにあるのかを分けて考えます。

1.最初に、採用したい人の「役割」を決める

採用コンセプトづくりは事業で必要になる仕事を一つ選ぶところから始めます。「優秀な人」「主体的な人」という人物像だけでは、何を任せたいのかが決まらないからです。

たとえば、新しい顧客を増やしたい会社と、既存顧客への支援を厚くしたい会社では、営業に期待する役割が違います。「営業経験者を採用する」の前に、入社後に担当してほしい顧客や、解決してほしい課題を書いてみてください。

最初に整理する項目書き方の例
事業で進めたいこと既存顧客が製品を使い続けられるよう、運用の支援を厚くする
任せたい役割顧客の利用状況を聞き、社内の技術担当者と改善案を考える
必要な行動・経験相手の話を整理し、分からない点を確かめながら提案を進める
入社後に学べること製品知識は、技術担当者との同行を通じて学ぶ

この表は架空の募集を想定した例です。必須の経験と、入社後に身に付けられることを分けると、求める人の範囲も検討できます。候補者像を詳しく描く場合も、架空の趣味や生活歴を増やすより、転職で変えたい仕事や、応募前に確かめたいことを先に考えます。

複数の職種を募集する会社なら、全社で共有する考え方と、職種ごとに伝える価値を分けて構いません。営業と開発に、同じ「挑戦」の説明を無理に当てはめる必要はありません。

2.経営者と社員に聞き、魅力を事実まで掘り下げる

次に集めるのは、会社が大切にしたいことと、現場で実際に起きていることです。経営者の方針、現場責任者の期待、社員が経験した出来事を照合します。

「裁量がある」と聞いたら、その言葉をコンセプト案に移す前に、本人が何を決めたのかを聞きます。提案できることと、最終的に決定できることは違います。予算の承認や品質確認など、誰かと相談する範囲も含めると、働く姿が具体的になります。

聞く相手確かめたいこと質問の例
経営者事業の方向と、新しい仲間に任せたいこと今の体制では手が届かず、これから進めたい仕事は何ですか
現場責任者任せる範囲と、支援できること入社した人が自分で決めること、相談して決めることは何ですか
在籍社員働く価値が表れた具体的な経験最近、自分の提案で進め方が変わった仕事を教えてください
入社して間もない社員入社前の期待と、働いて分かった違い入社前にもっと知っておきたかったことは何ですか

社員への質問は、肯定的な答えへ誘導しない形にします。「うちは挑戦しやすいですよね」では、想定している答えを相手に渡してしまいます。「最近、新しい方法を試した仕事はありますか。なければ、普段はどのように仕事を進めていますか」と、別の経験も話せるように聞きます。

英国政府のGOV.UK Service Manualも、利用者調査のインタビューで、中立的で開かれた質問を使い、一般論より実際の出来事を聞くよう案内しています。採用コンセプトの効果を示す資料ではありませんが、会社の見立てに回答を寄せない聞き方の参考になります。

社員取材で使う質問をさらに用意したい場合は、採用広報の社員インタビュー質問12選も使えます。ここで集めた話はコンセプトの根拠であると同時に、後で記事にする素材にもなります。

3.候補者の関心と、自社が提供できる価値を重ねる

採用で前面に出す価値は、候補者が大切にすることと、自社の仕事・支援が重なるところから選びます。魅力をすべて並べると、結局どんな仕事を望む人に向いているのかが見えなくなります。

候補者の関心は、採用担当者の想像だけで決めず、説明会や面談で受けた質問、入社の決め手、辞退時に共有された理由などから探します。個別の声を候補者全体の意見にはせず、分かっていることと、これから確かめる仮説を分けて残します。

候補者の関心と実際の仕事が重なる部分を採用で伝える価値に選び、条件や支援も一緒に確かめる図

編集部作成。重なる価値を選ぶための考え方です。制度や仕事の実態が候補者の希望に合うかを確認し、言葉だけで両者を一致させないようにします。

たとえば「提案が形になる仕事をしたい」という関心に対し、社員が顧客の声を持ち帰り、開発担当者と仕様を検討した経験があれば、仕事を説明する根拠になります。一方、提案の機会が特定のベテランに限られるなら、新入社員にも同じ機会があるとは書けません。任せるまでの経験や、職種ごとの違いを確かめます。

また、他社にもある価値だからといって捨てる必要はありません。「研修がある」だけなら似ていても、誰が教え、どんな仕事から始め、いつ一人で担当するかまで示せれば、候補者は比較できます。独自性を強調するために、未確認の「業界唯一」を付け足す必要はありません。

経営者と現場の話が食い違ったら

経営者が「若手に任せたい」と話し、現場では承認に時間がかかっているなら、その違いをコピーでまとめず、現状と目指す状態に分けます。

すでに任せている仕事を伝えるのか、任せられるように体制を変えている途中なのかで、候補者が受け取る意味は変わります。改善途中なら、現在の担当範囲と、決まっている変更を区別して説明します。未決定の施策を、入社後に受けられる支援として約束しないことが大切です。

4.「誰に・どんな仕事・何を根拠に」を一つの文にする

材料が揃ったら、社内で共有するコンセプト文をつくります。最初は広告のように短くせず、対象となる人、仕事を通じて得られる価値、それを支える事実が分かる長さで書きます。

次は、産業用の検査装置を扱う架空の会社が、技術営業を募集する場合の作成例です。実在企業やbaluboの支援実績ではありません。

集めた事実の設定: 技術営業は顧客先で検査の困りごとを聞き、設計担当者と仕様を検討する。入社後は先輩と同行して製品知識を学ぶ。設計変更には、技術部門の確認が必要になる。

届けたい相手の設定: 完成した製品を販売する仕事から、顧客の課題を聞き、解決方法を考える仕事へ担当を広げたい営業経験者。

採用コンセプトの案: 顧客の困りごとを聞き、技術者と解決策を考えたい人へ。先輩との同行で製品を学びながら、検査装置の仕様を顧客と一緒に詰めていく技術営業の仕事を伝える。

このコンセプトなら、コピーは「売る、その先の相談へ。」などと考えられます。ただし、コピーだけでは具体的な仕事も条件も分かりません。顧客への聞き取り、技術者との連携、同行による学習という説明を続けて、コンセプトの中身を伝えます。

もし新卒向けにも使うなら、「営業経験者」という前提を外すだけでは不十分です。最初に任せる仕事と、基礎から学べる支援を確認し、その人が入社後を想像できる説明へ書き直します。

コピーして使える採用コンセプトの記入シート

下の項目を埋めると、足りない材料が見えてきます。書けない欄には聞く相手や確認する資料を記入してください。

対象にする職種・部署:
事業で進めたいこと:
入社後に任せたい役割:
候補者が仕事で実現したいこと:
その関心を把握した情報・未確認の仮説:
自社で経験できる具体的な仕事:
学び・協力・相談を支える仕組み:
根拠となる出来事・資料・確認した人:
仕事の難しさ、適用条件、まだ提供できないこと:
採用コンセプトの説明文:
求人・社員記事・面談で伝える内容:
確認する人、確認日、見直すきっかけ:

5.社員と候補者の立場で、伝わる内容を確かめる

コンセプト案は経営者の好みだけで決めず、仕事を知る人と、その仕事をまだ知らない人の両方に読んでもらいます。前者には実態との違い、後者には伝わった仕事内容を確かめます。

現場の社員には「自分たちの仕事として説明できますか」「この言い方が当てはまらない場面はありますか」と聞きます。候補者に近い立場の人には、賛否だけでなく「どんな仕事をする会社だと思いましたか」「応募を考えるなら、次に何を知りたいですか」と尋ねます。よい印象を持ったかと、仕事を正しく理解できたかは、別の確認です。

修正するときは、まず原因を分けます。仕事の価値が伝わらないなら、説明や具体例を補う。説明は伝わったが希望と合わないなら、対象とする人や仕事の設計を見直す。すべてを言葉の問題に戻すと、コンセプトだけを何度も書き換えることになります。

公開例は、短い言葉と説明のつながりを見る

サイボウズは公式の「採用で大切にしていること」で、会社と個人の双方が期待に応える関係を重視し、文化・行動・役割の三つから人材要件を説明しています。人事ポリシーには、希望する働き方とチームの必要性を対話で調整する制度も記されています。

参考にしたいのは、印象的な言葉の模倣より、採用で大切にする考え方を、行動や制度の説明につないでいる点です。これは公開ページの読み方についての編集部の見解であり、同社の採用成果や、コンセプトの制作過程を検証した事例ではありません。

6.求人・社員インタビュー・面談に使う

採用コンセプトができたら、接点ごとに何を説明するかへ落とし込みます。同じコピーをすべてのページに貼るだけでは、候補者が判断するための情報は増えません。

先ほどの架空の技術営業なら、次のように使えます。

使う場面具体化する内容
求人・募集要項顧客先で聞く内容、技術者と分担する仕事、必要な経験と入社後に学べること
社員インタビュー顧客の相談を受け、設計担当者と仕様を検討した一つの仕事。迷った点と支援も聞く
採用サイトコンセプトの短い説明から、仕事内容・社員記事・募集要項へ案内する
面談・説明会候補者が希望する役割と、実際に任せる範囲を具体例で照らし合わせる

採用コンセプトを共通の軸として、求人では役割、社員記事では経験、面談では期待を確かめる関係図

編集部作成。同じ軸を、接点ごとに異なる判断材料として伝えます。架空の技術営業の例を整理したものです。

記事の企画では、「うちは成長できますか」と会社の評価を聞くより、「製品知識が足りなかったとき、誰に何を聞いて商談を進めたか」と、根拠になる仕事へ戻ります。製造業の情報発信全体を組み立てる場合は、製造業の採用広報ガイドで、仕事内容・判断・支援をどう配置するかも確認できます。

公開後は、面談でどんな疑問が残ったか、担当者の説明と社員の経験にずれがなかったかを記録します。応募数などの数字を見る際も、給与、募集経路、選考時期などが変わっていれば、増減をコンセプトだけの効果とは判断できません。仕事内容や支援の仕組みが変わったときには、言葉と根拠を一緒に見直します。

まずは一つの募集職種について、現場の社員に「この仕事を面白いと感じた、最近の出来事」を聞いてみてください。その出来事を誰に伝えたいか、入社した人も同じ経験ができるかを考えることが、採用コンセプトづくりの第一歩になります。

社内の話を整理する段階から支援が必要な場合、baluboの採用ブランディング支援では、採用コンセプト・対象人材・訴求メッセージの設計や、社員インタビューの制作を相談できます。検討中の職種と、いま伝え方に迷っている点を整理しておくと、必要な支援を話し合えます。

参考にした公開資料

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