ホワイトペーパーを作ることは決まったけれど、何を書くかが決まらない。営業資料を集めると情報が多すぎて、会社紹介だけで何ページも埋まってしまう。
最初の1本では、誰が、どんな場面で困っていて、読み終えたら何を決められる資料にするかを先に置きます。その答えに必要な根拠と構成をそろえ、配布する場所まで決めると、制作に取りかかれます。
この記事では、企業間取引(BtoB)の発信を担当する人に向けて、企画メモから原稿・デザイン・配布後の確認までを説明します。以下の構成例とチェック項目は、公開資料とbaluboの編集方針を踏まえた編集部の提案です。
ホワイトペーパーとは、検討に使う情報をまとめた資料
BtoBマーケティングでいうホワイトペーパーは、見込み客の課題や検討事項について、知識・手順・比較材料などをまとめた資料です。Adobeの解説でも、入門ガイド、チェックリスト、比較表、事例紹介などが挙げられています。1
商品・サービス資料が仕様や提供条件を中心に説明するのに対し、ホワイトペーパーでは、読み手がそのテーマを理解し、次の判断へ進むための情報に重点を置きます。ただし、両者の内容は重なることもあります。呼び名より、資料が答える問いを明確にしましょう。
たとえば業務管理ツールを扱う会社なら、「機能の一覧」と「業務の引継ぎで確認すべきこと」では資料の役割が違います。後者を読む人は、ツールを選ぶ前に、そもそも社内で何を整理すればよいかを知りたいかもしれません。
PDFにすると保存や共有に使えますが、形式から先に決める必要はありません。頻繁に更新する短い手順ならWeb記事、書き込む作業が中心なら編集できるワークシートも候補になります。資料を作る目的がまだ曖昧なら、コンテンツマーケティングの基本から整理してください。
企画は「読者が決めたいこと」から絞る
企画では、会社側の目的と読者側の目的を一つずつ書きます。「見込み客との接点を増やす」は会社側の目的です。読者側には「引継ぎの漏れを点検し、担当者と期限を決める」のような、資料を使う理由が必要です。
HubSpotの制作手順も、目的・読者・課題を整理してから、テーマや資料の種類、調査、構成へ進む形を示しています。2 ここでは、読者の属性に加えて「いま何を決められずにいるか」を書く方法を勧めます。
営業や問い合わせ対応の記録から題材を探すなら、「よく聞かれる」という印象だけで決めず、実際に出た問いと、誰がどの場面で困っていたかを確かめます。個社の事情をそのまま一般化せず、他の読者にも当てはまる条件を見ます。
そのまま使える企画メモ
次の項目を文書にコピーし、構成を作る前に埋めてみてください。確認できない部分は「確認中」とし、確認先を書きます。
読者と使う場面: 誰が、どの仕事の途中で開くか。
読者が答えを知りたい問い: 今回の資料で扱う一つの問い。
読後にできること: 比較する、点検する、社内で相談するなど。
会社側の目的: 接点づくり、営業の説明補助など。
使える材料: 公開資料、取材、許可を確認した社内資料。
今回扱わないこと: 読者の問いから外れる話題。
配布場所と次の案内: 関連記事、案内ページ、相談先など。
確認担当と更新条件: 誰が内容を確かめ、いつ見直すか。
以下は架空の企画例です。
- 読者と場面: 担当者の異動が決まり、引継ぎの準備を始める部門責任者。
- 問い: 後任が仕事を始められるように、何を確認して渡せばよいか。
- 読後にできること: 業務・担当者・期限・参照先を一覧にし、未確認の項目を洗い出す。
- 会社側の目的: 業務整理に関心のある担当者との接点をつくる。
- 扱わないこと: 特定の人事制度や、自社製品の全機能。
「業務改善のすべて」のような大きなテーマは、材料も構成も広がります。最初は、上の例のように一つの仕事の場面へ絞ると、必要な説明と省ける説明を分けられます。
構成は、各ページで答える問いを並べる
構成では、ページ番号だけでなく、問い・答え・裏付ける材料を組にします。先に文章を流し込むと、情報が足りない箇所と、単に余白がある箇所を区別しにくくなるためです。
引継ぎを題材にした資料なら、次のような構成が考えられます。これは編集部による作例で、標準のページ数や成果を保証する型ではありません。一つの項目が複数ページになっても構いません。
- 表紙と対象読者: 誰のどんな引継ぎを扱うか。タイトルと短い説明で示す。
- 確認する範囲: 日々の業務、定期業務、例外対応のうち、今回どこまで整理するか。
- 引継ぎ項目: 業務の手順に加え、期限、判断が必要な場面、相談先、資料の所在を説明する。
- 記入例: 一つの架空業務を使い、項目をどう埋めるか見せる。未確認事項も残す。
- 点検用シート: 読者が自分の業務に当てはめて書き込める形にする。
- 運用時の注意: 後任の確認、情報の閲覧権限、引継ぎ後の更新担当を整理する。
- 次の行動: 社内で確かめることを示し、必要な場合の支援内容や相談先を案内する。
記入例には、未確認の項目も残す
引継ぎのチェックシートなら、空欄のひな形に加えて一件だけ記入例を置きます。たとえば、次の架空の業務です。
業務: 顧客から届く見積依頼の受付
最初の対応: 依頼内容を確認し、営業の担当者へ渡す
期限: 社内の対応基準を確認中。公開前に責任者へ確認する
判断に迷う場面: 製品の型番や希望納期が書かれていない
確認先: 担当する営業窓口。連絡先は社内で記入する
未確認の期限をもっともらしい日数で埋めると、使う人がそれを決まりだと受け取るおそれがあります。完成例を見せるために不明点を隠さず、誰に聞けば埋まるかまで示しましょう。
ページ数は、答えと可読性から調整する
会社概要や実績を足して枚数を合わせる前に、各ページの役割を一行で説明できるかを見ます。同じ問いに同じ答えを返すページはまとめ、判断に必要な前提が欠けていれば補います。これはbaluboの編集で重視している、情報を「その一本の役割」で選ぶ考え方を資料制作に応用したものです。
調査レポートなら方法や対象の説明、比較資料なら比較条件、作業手順なら例外への対応に分量が必要です。一律に短くするより、読み手が迷う箇所へ説明を配分します。章と根拠を対応させる方法は、記事構成案の作り方も参考になります。
原稿・図版を作り、内容確認を終えてから仕上げる
制作は、使える根拠を確認し、原稿と図版のラフを作り、内容の確認後に細部のデザインを整える順で進めます。原稿とラフは早めに共有し、足りない材料や、読み手に伝わらない箇所を仕上げ前に確かめます。構成段階で、執筆、図版、事実確認、公開可否の判断を誰が担うかも決めておきます。
社内の専門家へ聞くときは「この方法がよい理由」だけでなく、「どの条件では合わないか」「別の方法を選ぶのはいつか」も尋ねます。たとえば引継ぎ資料なら、定型のチェック項目だけで扱える業務と、担当者の判断を聞かなければ伝わらない業務を分ける材料になります。
根拠は、使うページと結び付けて管理します。
- 数字・調査: 原典、調査時期、対象、設問や集計条件、引用する箇所。
- 実務の手順: 実際に確認した担当者、対象業務、例外や適用条件。
- 事例・画像: 掲載できる範囲、利用条件、必要なクレジット。
- 作例: 架空の記入例であること。実績や顧客の発言として見せない。
AIを使う場合は、構成の別案や文章の重複を探す補助から始められます。出典や事例を作らせて確認済みにせず、社内資料を入力できるツールと範囲も先に確認します。
PDFは、書き出したファイルを読む
制作画面で整っていても、読者に渡すファイルで問題がないかを確認します。少なくとも本文・図中文字・出典の可読性、文字の欠け、リンク先、ページ順、ファイル名と版を点検してください。文字を選択・検索できるか、読む順序が伝わるかも確認対象です。
スマートフォンで読んでもらう想定なら、その画面でも開きます。文字を小さくして一枚へ詰め込むより、情報を分ける、縦の構成にする、Webで読める版を併設する、といった選択肢があります。作成ツールは、見た目に加えて、更新担当者が編集できることを基準に選びましょう。
配布場所と「読んだ後」をセットで決める
配布は、誰がどこで資料を見つけ、どう受け取り、次に何ができるかまで設計します。資料を置いただけでは、読者がその存在や使い方を知るとは限りません。
たとえば、引継ぎの悩みを扱う記事から、記入例と点検シートを含む資料へ案内し、個別に相談したい人へ窓口を示す流れです。記事も資料も、それぞれの問いへの答えを渡します。記事の答えを意図的に欠かせ、資料へ移らないと理解できない構成にはしません。

フォームの有無は、資料の目的に合わせる
広く読まれ、社内で共有されることを優先するなら、入力不要で配布する方法があります。資料の受け渡しと継続的な接点を作りたいなら、申込フォームを設ける方法もあります。いずれも、資料の価値と読者に求める手間を合わせて考えます。
案内ページには、対象読者、得られる内容、資料の一部がわかる目次や見本、受取方法を示します。フォームを使う場合は、入力情報の利用目的とその後の連絡について、実際の運用に合う説明を用意します。入力項目を増やすときも、何の判断や対応に使うかを担当者間で確認しましょう。
公開前には、担当者自身が案内ページから資料を受け取るまでを通して確認します。共有設定、ファイルの取り違え、送付メールのリンク、スマートフォンでの表示を点検します。テスト登録を実際の見込み客数へ混ぜないよう、計測担当とも区別の方法を決めておきます。
配布後は、資料への反応と商談を分けて見る
効果測定では、資料への入口、申込み、ファイルへのアクセス、その後の相談を分けます。ダウンロードと呼んでいる数字が、何を数えているかを最初に確認してください。
たとえばGoogle アナリティクス4(GA4)の拡張計測機能の file_download は、対象の拡張子を持つファイルへのリンクがクリックされたときのイベントです。PDFも対象ですが、この記録だけで保存完了や読了を確認したことにはなりません。設定と実際の配布経路で計測できるかを確かめます。3
改善箇所は、次のように切り分けられます。
- 案内ページへの到達が少ない: 関連記事や営業の案内など、資料を見つける経路を確認する。
- 案内は見られるが申込みが少ない: 対象読者、資料の内容説明、入力負担を確認する。フォームを使わない配布では、この段階を指標にしない。
- 受取方法について質問が来る: リンク、閲覧権限、案内文など、受け渡しの経路を点検する。
- 資料の内容について質問が来る: 回答が不足していたのか、個別条件の相談なのかを分け、次の修正や支援に使う。
数値だけで原因を決めず、実際の案内画面や質問内容を合わせて見ます。資料を読んだ人が後日商談へ進んでも、それだけで資料単独の効果とは断定しません。目的と指標の分け方は、オウンドメディアのKPI設計で詳しく扱っています。
まずは企画メモに「読者の問い」と「読後にできること」を書き、手元にある根拠を並べてみてください。足りない材料がわかれば、調査や取材の依頼も具体的になります。配布後に誰が質問を拾い、内容を更新するかまで決めて、最初の1本を運用へつなげましょう。
出典・参考
- Adobe「成果につながるホワイトペーパーとは?種類や作り方のコツを解説」
- HubSpot「ホワイトペーパーの作り方8ステップ・作成後のPR・書き方のコツを解説」
- Google アナリティクス ヘルプ「拡張計測機能イベント」
参照情報の確認日:2026年10月13日。企画メモ、引継ぎの構成例、制作・確認の順序、改善の切り分けは編集部の提案です。個別の制作実績や成果を示すものではありません。


