AI検索対策を考えるときは、まず記事の中身を見直します。「自社の条件なら、どちらを選べばよいか」という問いに、本文は答えているでしょうか。
2026年9月、国内電通グループが提唱した購買行動モデル「AIJES(アイジェス)」は、人間の判断に着目しています。この視点をBtoBオウンドメディアへ引き寄せると、見直す箇所が見えてきます。見出しを検討者の問いに合わせ、判断基準と、その根拠となる一次情報を書く。 本稿では、この編集作業を具体例で考えます。
AI検索の広がりを、記事づくりにどう受け止めるか?
サイバーエージェントGEOラボの2026年8月期調査では、AI Modeを含む生成AIの検索利用率は52.3%でした。2025年5月の調査開始以来、初めて5割を超えています。同じ調査で、検索エンジンの利用率は86.9%。初回調査の91.9%から下がっています。調査リリース
調査は全国の15〜69歳の男女9,278人を対象に、2026年8月7〜10日にマクロミルが実施したインターネット調査です。52.3%はこの調査での利用率であり、検索回数の52.3%が生成AIへ移ったという意味ではありません。公開リリースでは、利用頻度の下限を含む設問全文までは確認できません。また、BtoBの発注担当者に絞った調査でもありません。数字をそのまま自社の顧客像へ当てはめることは避けたいところです。
それでも、読者との接点としてAIの回答を想定する理由にはなります。たとえば発注担当者が、制作会社へ問い合わせる前にAIで候補や比較軸を整理する。その場面を想定し、記事に何を用意するかを考えます。こうした順序がBtoB全体で定着した、という主張ではありません。
AIJESは、人のどんな判断に着目しているか?
電通総研・電通・電通デジタル・電通マクロミルインサイトは、2026年9月10日にAIJESを発表しました。情報を蓄積し、AIと問答し、人が判断する。さらに参加や評価へ進み、循環する購買行動モデルです。電通総研の公式発表
Archive|蓄積
情報の蓄積。
Interaction|問答
AIとの問答。
Judgment|判断
最終的な意思決定を担う人の判断。
Engagement|参加
判断の後の参加。
Score|評価
評価を経て、再び循環する。
公式発表は、AIJESを従来のAISASの発展形と位置づけています。過渡期には両者が並走すると想定し、AI経由以外の情報入手も重視しています。AISASのSearchを機械的に二つへ分割した、と読むのは正確ではありません。
これは購買行動を捉えるためのモデルです。記事の引用率を測った調査でも、BtoBの購買経路を実証したデータでもありません。本稿で取り出したいのは、AIとのやりとりの先で、人が決めるための材料をどう用意するかという視点です。
FAQを追加すれば、判断できる記事になるか?
「導入メリットは何ですか」という見出しに、「業務効率化とコスト削減です」と答える。問いの形にはなっていますが、読者は自社に当てはまるか判断できません。費用や担当者の負担、導入が向かない条件が抜けているためです。
Googleも、AI OverviewsやAI Modeへの掲載に、専用の構造化データや新たなAI向けファイルは不要と説明しています。一方、クロールできること、重要な内容をテキストで示すことなど、基本的なSEOは引き続き必要です。この説明の対象はGoogle検索のAI機能です。Google Search Central
技術的に読める状態を整えたうえで、本文が答えていない問いを探す。LLMOやGEOと呼ばれるAI検索対策のうち、ここは企画・取材・編集が担える領域です。
問いを具体化する
「メリットは?」から、「どんな体制なら導入効果を見込めるか?」へ。
答えに条件を添える
推奨する選択肢に加え、適用条件と、選ばないほうがよい条件を書く。
見出しを、検討者の問いへどう書き換えるか?
最初に直すのは、記事が答える問いです。BtoBオウンドメディアの制作代行を検討する担当者なら、「制作の流れ」という項目名だけでは、自分の心配事を探しにくいかもしれません。「外注しても社内に残る作業は何か?」まで具体化します。
- 記事制作の費用
- 内製と外注の違い
- 制作の流れ
- 見積もりには、どこまでの作業が含まれるか?
- 社内編集者が不在でも外注できるか?
- 発注後、社内にはどの確認作業が残るか?
全体像を説明する見出しにも役割があります。すべてを疑問文にする必要はありません。営業時の質問、見積もりへの差し戻し、失注時の懸念を集め、発注判断を扱う節から問いを具体化します。
問いの直後には、短い答えを置きます。続けて、その答えが当てはまる条件と根拠を書く。この順序なら、読者が必要な箇所を拾い読みしたときにも意味を追いやすくなります。疑問符を付けること自体に、AIの引用を増やす効果が確認されているわけではありません。
判断基準には、何を書けばよいか?
二つ目は、読者が選択肢を分けられる基準です。費用を扱うなら、金額と作業範囲をセットにします。取材、撮影、専門家確認、図版、公開作業のどこまでを含むかで、同じ「記事1本」の意味が変わるからです。
費用相場を掲載する場合は、調査元や確認日、対象案件の条件も必要です。自社の見積もり例なら、その旨を明記します。根拠がない段階では相場を作らず、見積もりで確認する項目を示します。
- 企画と品質確認を担う編集者がいる
- 取材先へのアクセスと制作時間を確保できる
- 公開までの進行を継続して管理できる
- 担当者が兼務で進行が止まる
- 専門家の話を読者向けに編集する人が足りない
- 取材や構成など特定工程に不足がある
外注する場合も、製品情報の確認や公開承認を誰が担うかは決める必要があります。「外注なら社内工数はゼロ」と読める記事では、発注後の認識がずれます。社内稟議で使える比較軸は、価格だけでなく、社内に残る役割、確認回数、公開までの担当範囲です。
架空の資料から、書いてよい答えを選ぶ
次は、記事制作の外注を検討する担当者へ説明するための架空例です。特定企業のサービス、baluboの提供条件、実際の顧客案件ではありません。時間や修正回数も、この例だけの設定です。
手元に次の三つの資料があるとします。資料があることと、その内容を公開してよいことも分けます。
| 架空の資料 | 確認できた設定 | 原稿への扱い |
|---|---|---|
| A:公開を認められた見積条件 | オンライン取材45分・対象者1人、初稿作成と修正1回。撮影とCMS入稿は別の範囲 | 依頼範囲の説明に使う。金額や納期はこの資料から補わない |
| B:依頼側の打ち合わせメモ | 製品情報の事実確認と公開承認は社内に残す。誰が確認するかは未合意 | 社内作業が残ることは説明する。確認担当者の名前や決定済みの日程は書かない |
| C:営業用の下書き | 「丸投げで工数ゼロ」「制作期間を30%短縮」とあるが測定資料はない | 効果の根拠として採用しない。必要なら測定方法と対象を追加確認する |
元の原稿が「編集者がいなくても、記事制作を丸ごと任せられます」なら、A〜Cだけでは裏づけられません。撮影や入稿が含まれず、社内確認も残るためです。「どこまで外注でき、何が社内に残るか」という問いへ、次のように直せます。
修正後には「任せる工程」「社内に残る判断」「別途決める範囲」「まだ分からない効果」が残ります。依頼先の比較に必要なのは、形容詞を増やすことより、この四つを確認できる文章です。依頼書へ移すなら、記事制作の依頼内容と完了条件で、目的・範囲・確認者を一組にして残せます。
一次情報を、取材でどう集めるか?
三つ目は、判断基準を支える一次情報です。取材相手の実名だけでは足りません。誰が、どんな状況で、何と比較し、なぜ決めたのか。その条件まで聞きます。
判断前の状況
どの業務の、どの場面で困っていたか。担当人数や運用の制約は何か。
選択の理由
何と比較したか。採用した条件と、見送った条件は何か。
実際の変化
何が、いつから、どう変わったか。数字なら期間・対象・測り方を確認する。
適用の限界
同じ方法が向かない組織や、実施前に整える必要がある条件は何か。
成果だけを抜き出すと、読者は再現できるか分かりません。「作業時間が減った」なら、対象業務、比較期間、測定方法を添える。発言を短く編集するときも、その条件を離さず残します。
実名や数値の掲載には許諾と確認が必要です。匿名化や数字の丸めだけで、公開不可の情報を使えるようにはなりません。公開できない項目は保留し、相手と公開可能な範囲を確かめます。一次情報があってもAIに引用される保証はありません。ただ、出典や検証可能な条件を記事に持たせることは、読者が回答の根拠を確かめる助けになります。
条件や理由を聞く具体的な質問は取材質問の設計、誰に何を確認したかを残す方法は取材メモの取り方へ進めます。
既存記事の1本から、どの順番で直すか?
まずは、商談で参照される既存記事を1本選びます。新しい記事を増やす前に、担当者が実際に迷う問いへの答えがあるかを確かめます。
問いを集める
営業担当者から、費用・体制・導入条件について実際に受けた質問を集める。
答えの不足を探す
本文に答えがあるか、適用条件や出典が抜けていないかを人が確認する。
必要な箇所だけ取材する
不足する判断理由や現場の条件を、情報を持つ担当者へ確かめる。
原文と要約を比べる
AIに本文を要約させ、推奨条件・除外条件・数値の前提が落ちていないかを見る。
要約の確認には、次の依頼文を使えます。
次の記事だけを根拠に、検討者が選択肢を判断するための材料を整理してください。「向く条件」「向かない条件」「費用・作業範囲」「根拠となる情報」を分け、記事に書かれていない項目は「記載なし」としてください。各項目に根拠の見出しを添え、推測で補わないでください。
要約で条件が落ちたら、原文と根拠へ戻る
要約への依頼文には、「見出し」に加えて根拠の一文も残すよう指定すると、原文との対応を確かめやすくなります。ただし、AIの出力自体が元資料の正しさを証明するわけではありません。AIが「記載なし」とした項目も、人が本文を見て抜けていないか確かめます。
上の修正例を要約したと仮定して、次のような出力が返った場合を考えます。これも説明用に作った例で、AIサービスを実行して得た回答ではありません。
| 架空の要約出力 | 原文と照合した判断 | 次に直す場所 |
|---|---|---|
| 「社内編集者が不在でも、確認作業を含めて外注できる」 | 社内で事実確認・公開承認をする条件が反転している | この要約は採用しない。担当範囲の一文を照合し、原文でも社内担当と外部担当を近くに書く |
| 「取材と原稿作成を依頼できる」 | 間違いとは限らないが、修正回数・撮影・入稿の範囲が落ちている | 要約を依頼先の比較資料へそのまま使わず、除外条件を戻す |
| 「社内工数の削減幅は資料から分からない」 | 未測定という原文の留保を保持している | 「分からない」を効果ゼロに言い換えず、そのまま記録する |
条件が落ちる原因は原文だけにあるとは限りません。指示、出力の長さ、モデルの動作でも変わります。一回の誤要約から「記事が悪い」「この書式なら引用される」と結論づけず、原文の曖昧さと要約側の誤りを分けて扱います。根拠の照合はAIが挙げた出典を確認する手順も参考になります。
本文を直接渡して要約する作業は、原稿の不足や条件の欠落を探す確認です。AI検索で記事が発見・引用されるかの検証とは別です。検索で評価する場合は質問、利用サービスと機能、実施日、地域・端末などの条件、取得失敗、引用URLを記録し、引用と、その後の訪問・問い合わせを分けます。Googleの掲載条件や公式レポート、手動観測の記入例はAI Overviews対策の3つの改善策で扱っています。
制作代行には、どの工程を依頼するか?
社内で問いと根拠をそろえられるなら、既存記事の編集から始められます。情報を持つ人はいても、それを引き出し、読者の判断順に組み立てる担当者が足りなければ、企画や取材から外部支援を検討できます。
BtoBオウンドメディアの制作代行や、LLMOを意識した記事制作を依頼するときは、納品本数に加えて「誰のどの問いに答えるかを、どう決めるか」を確認してください。質問設計、事実確認、編集、公開後の見直しまで、担当範囲が見える提案を比較します。
発注時は、原稿納品までか、CMSへの下書き保存・公開・公開後の表示確認まで含むかも分けます。素材を渡せるか、取材できるか、記事へ掲載できるかは別の確認です。確認者と完了条件が未決なら、その欄を未決のまま依頼書に残し、誰がいつまでに決めるかを合意します。
記事を作り替える出発点は、「AIが読めるか」に加えて、「この情報で読者が決められるか」を確かめることです。
出典・確認範囲
- サイバーエージェントGEOラボ「生成AIのユーザー利用実態調査」2026年8月期(2026年9月4日発表)。設問全文は公開リリースで確認できないため、利用頻度を推定していません。
- 電通総研「国内電通グループ、AI時代の新購買行動モデル『AIJES』を提唱」(2026年9月10日)。モデルの説明を参照し、BtoBへの応用は本稿の編集上の提案として記述しています。
- Google Search Central「AI features and your website」(2026年10月15日確認)。Google検索のAI機能に関する説明です。
資料確認日:2026年10月15日。資料A〜C・修正例・要約の例・編集手順は編集部の説明用の提案です。独自の利用者調査やAI回答の実験を行った記事ではありません。



